ナイトクローラー

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ダン・ギルロイ監督 2014 アメリカ ☆☆☆

ジェイク・ギレンホールと言えば未だにドニー・ダーコでの鏡を見つめてるイメージなんだけど、本作での彼はヤバイですね。こけた頬にでっかい目ばかりギラギラしてて、まるであの頃のウサギが乗り移ったかのようです。そして観ている間この顔つきは誰かに似ている、、とずっと思っていたのだけど、正解はジョニー・グリーンウッドでした。

仕事にありつけず細々とした窃盗で何とか食いつないでいる孤独な男ルイスは、ある時偶然遭遇した事故現場で過激な映像をTV局などに売り付けて稼ぐパパラッチ達と出会う。お気に入りの自転車を売った金で何とか小さなビデオカメラと警察無線傍受機を手に入れ、時に強引な手段をも厭わず何とか仕事を軌道に乗せていくルイス。しかし元々真実や報道の意義などにまるで関心の無い彼の欲望は、次第に周囲をも巻き込む巨大な暴走となっていく。

先日書いた大根仁監督のSCOOP!が消化不良気味だったので、同じ様な題材を扱っている本作、アメリカではパパラッチはどう扱われているのかと思って観てみたらまさかのサイコスリラーで驚く。本作におけるパパラッチは主人公の狂気を引き立てるキャラ設定上の小道具、舞台装置程度のものでしかなかった。

主人公ルイスは物語冒頭から既に完成されたサイコパスであり、生い立ちや境遇みたようなものも徹頭徹尾描かれない純粋悪のような存在として描かれている。パパラッチというまさに「人の不幸が飯のタネ」なヤクザな商売に対する葛藤も負い目も、またそんな彼の苦悩を通して、人の不幸は正直観たいが自分の手は汚したくないという大衆の身勝手さを炙り出すみたいな意図も、この映画には一切無い。ただ何のためらいもなく悲惨な事故現場に突撃し、場合によってはよりショッキングな絵面や状況になるよう現場に手を加えたりする事にも全く躊躇いを見せない主人公のサイコパスっぷりを堪能する、そういった作りになっている。

ただジェイク・ギレンホールの佇まい、一見大人しそうな雰囲気とか、多くの場面で会話が噛み合っているようで実は何となくおかしい感じとか、とにかく最高のサイコパス感。特にあの叫びながら鏡割る場面。彼の中の獣が一瞬だけ顔を出したという感じで滅茶苦茶怖くて良かった。その他熟女好きとか、目立つ事NGな職業なのに真っ赤なスポーツカーとか、細かい人物設定の演出も地味によく効いていたな。

というわけで当初割と社会派かなと思って観始めたら、例えばレクター博士とか、人間らしい葛藤を一切持たない悪の怪物を楽しむ系だったのには意表を突かれたけど、まあそれはそれで何だかんだ面白かったという、そんな作品。

夜のLAの重たい雰囲気や、もはやギャグのような終わり方も結構好きだった。