ボーダレス 僕の船の国境線

映画「ボーダレス ぼくの船の国境線(Bedone Marz)」: monad

アミールフセイン・アシュガリ監督 イラン 2014 ☆☆☆☆

アミール・ナデリやアッバス・キアロスタミで有名なイラン映画界の懐は深い。この二人しか見たことないけど。彼の地では複雑な政治状況や検閲をくぐり抜ける為に物語を子どもを主人公に据えて寓話化する事が多い。ゆえに子ども映画の傑作が多いのだとは、本当なんだろうか。

イラン・イラク国境の川に打ち捨てられた廃船でひっそりと暮らす少年。しかしある日銃を持った同じ年頃のイラン少年兵が侵入してき、それ以来、船の中にもロープが張られ境界が敷かれる。お互いへの緊張を孕みながら、奇妙な共同生活が始まる。

とてもミニマム。特に前半はセリフも少なく、静かな映画。舞台も廃船のみで登場人物もそれぞれイラン・イラクアメリカを象徴する三人だけだが、物語の背景にある巨大な戦争のうねりが映画のあらゆる部分から感じられる。

小さな物語を丁寧に描くことでこそ、巨大なものを捉える事が出来るというお手本の様な良作。そして、影の主人公とも言える廃船の風情も素晴らしかった。