ビー・デビル

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チャン・チョルス監督 韓国 2010 ☆☆☆

キム・ギドク監督の助監督によるデビュー作。さもありなんといった感じのバイオレンスな復讐譚でやや強引だったり舌足らずに感じられるところもあるものの、デビュー作でこれだけのものが出来れば充分だろう。

ソウルの仕事場でトラブルを起こし休暇をとる事にしたへウォンは、久方ぶりに故郷の孤島へ帰省し幼馴染みのボンナムらと再会する。へウォンの帰郷を喜ぶボンナムだったが、彼女は人口わずか9人のこの島で、夫や義母達から虐げられて生活していた。

韓国映画一流の虐待や暴力描写の濃さ、えぐさと、一方でどこか退廃美な感じは本作にもばっちり継承されている。ボンナムの中に貯まりにたまった鬱憤と言うには余りに重い絶望が、とどめとなるある出来事を経て一気にあふれ出す、そこに至るまでの過程とその後の描写も非常に無理のないスムーズなもので、素直に感情移入して見られる。

ただそのボンナムのいわば起爆に絡んでいくへウォンとの友情についての語り口がやや舌足らずで、特に肝心のへウォンがボンナムに対してどのような気持ちを抱いているかの描写がいまいち弱いので、起爆やその後の展開についてのカタルシスがどうにも薄くなってしまっているのはやや残念。せめてへウォンが島から出て行った当時のエピソードなどがあればまた違って見えたような気もする。

あと本作の「ビー・デビル」というタイトルには、ボンナムとへウォン、一体どちらが悪魔と言えるのかというメッセージが仕込まれていると思うのだが、いかにボンナムがエグい復讐に走ろうとへウォンが多少見て見ぬ振りをしようと、とにかく村の奴ら(特に男二人)が全員圧倒的にクズすぎて、主役二人への問いかけがどうしても薄くなってしまっている。

冒頭にも書いたけどデビュー作にしてはよくまとまっているし、レベルの高いエログロリベンジには定評のある韓国映画界の中でも充分中堅は張れる内容であると思う。役者達も、特に主演女優の二人は素晴らしい。ただ水準が高いだけに、物語のクライマックスであるボンナムの爆発、そしてそこからのカタルシスに関わる上記2点がもう少し丁寧に描写されていればと思わずにいられない、そんな作品。

しかし傷口にあれとは、韓国映画界の肉体陵辱バリエーションには毎度ながら恐れ入る。ビジュアル最高だった。