レヴェナント:蘇りし者

レオナルド・ディカプリオの俳優魂!7つの過酷な挑戦に迫る『レヴェナント』 | cinemacafe.net

アレハンドロ・イニャリトゥ監督 アメリカ 2015 ☆☆☆☆

熊に襲われて瀕死のディカプリオ(主人公グラス)が、それでも息子を殺した男に復讐するため極寒地帯でひたすら頑張る。

開拓時代のアメリカ極寒地帯で鋭い目つきのディカプリオが復讐する話、としか認識がなかったが、もっとエンタメ色の強いものかと思っていたら非常にストイックで内向的な作品だった。しかしディカプリオが主役というだけで、良くも悪くも映画全体にあんまり悲壮感が漂わないのは自分が彼に抱いているイメージだろうか。

もっと人間関係や愛憎入り乱れる、台詞の多い映画かなと予想していたが、実際見てみると悪漢に殺された息子の復讐を果たすというシンプル極まりない粗筋で、過酷だが美しい大自然の中を瀕死の状態でさ迷いながら、ほとんどたった一人でサバイブする主人公の道行きにこちらもじっくり付き合うような雰囲気。旅する様子の描写も時に過去の記憶や幻像が行き交うような、内省的な趣が強い。

過酷な冬の大自然を、様々なシチュエーションでこれでもかと広大且つ奥行き深く写しとっている映像はとにかく凄い。これだけスケールの広い絵面がしかもどんどん切り替わる映画って、自分はちょっと他に見た覚えがない。本当に終始視界の広い作品で、これだけでも映像作品としても成立するほど。相当な労力と期間をかけて撮影されたであろうことが素人でもすぐに分かるレベルで、非常に満足。

反面お話はややチープ。開拓民対先住民の構図を背景に登場人物個々人の色んな愛憎が渦巻いているのは分かりやすいのだけど、その辺りを中途半端に描く事によりかえって、例えばグラスと復讐相手双方の雇い主である隊長があまりにもディカプリオに対し善意の人であることが不自然に見えることや、何より復讐相手であるフィツジェラルドの小物っぽさが増しているなどの弊害が出ている。この辺りはおそらく原作小説だともっと丁寧にじっくり描かれていて、物語に厚みを与えているのだろうと予想するが、本作ではやや舌足らずだったかなという印象。特にフィツジェラルドが先住民に受けた拷問の様子を話すところは、彼の人間性に奥行きをもたらすという意味では、自分には逆効果に思えた。

主人公が幾度となく訪れる危機を乗り越えていく映画なんて沢山あって、本作も一応その系譜なのかもしれないが、本当に毎回泥臭く、傷つき逃げ回りながら何とか生き延びていく様は明らかに死んだ方がマシな感じで、非常に見応えがあった。そしてディカプリオと藤原竜也って何となく立ち位置に共通するものがあるかもなと、鑑賞後に初めて思った。そんな映画。