デューン/砂の惑星<劇場公開版>(1984)

映画感想『デューン/砂の惑星(1984)』|マルハボロ|note

デヴィッド・リンチ監督 1984 米 ☆☆☆☆

昨年公開されていたリドリー・スコットによる新生DUNEが面白かったと知り合いが言っていたので、とりあえず評判の悪い、このリンチ版から復習。大昔にも一度見たことがあったはずだが、ほぼ覚えていない。

不思議な力をもつ香料が採取できる宇宙で唯一の星アラキス、またの名をデューン。雨が降ることが無く、どこまでも砂漠が広がるこの星の利権をめぐって、公爵派と男爵派が闘う。主人公は公爵派、というか公爵の息子。男爵派には帝国とギルドがついている。。

見終えてまず思った事は、スターウォーズって本当に分かりやすくて格好良くて、よくできたシリーズなんだという事をあらためて。翻って本作は、長大な原作の内容や要素を無理矢理2時間強というコンパクトな枠に納めているのだろうから無理も無いけど、色んな用語や勢力図みたいな事が前後の流れもないままにいきなり飛び交うので分かりづらい上に、一番まずいのは全部の要素が本作だけ見ていると何だかとってつけたような感じでペラペラに思えてしまうこと。時間がないなら無いなりにうまく演出して各設定やキャラクタの裏側に厚みを持たせることが出来ればまた違ったのだろうけど、本作は何せ駆け足(特に後半の展開はマジで駆け足)で急いでいるような作品なので全てが薄っぺらく、結果壮大というよりは全体がシュールなギャグのようになってしまっているのは、何とも勿体ない印象を受けた。

ただし美術や衣裳は今見ても充分に素晴らしい。特にBLAME!の様な重SFが好きな自分には序盤の、帝国皇帝とギルドの長の会談シーンは想像力・実現力共に最高だったし、本作の影の主役「ワーム」の表現も思っていた以上だった。他に宇宙船の発着場のだだっ広い感じや、主人公達が闘う時にベルトのボタンを押して発動する「シールド」の表現なんかも面白くて見応えがあった。ただ惜しいのは、本作には主人公や「教母」と呼ばれる人たちのみが使える(フォース的)超能力「声(ヴォイス)」なるものがあり、またそれを利用した(ライトセーバー的)特殊な射撃術もあるのだが、その在り方や表現が如何せん余りに地味でかっこ悪い、、せめて射撃術に使用される特殊な銃みたいなものがそれこそ重力子放射線射出装置のように格好良ければいいのだが、何だか小型の如雨露?みたいなやつに「声」を吹き込んで射出するという絵面は、面白いのだけど格好良いかと言われると非常に難しく。ここでもやはりライトセーバーとフォース、ひいてはジェダイナイトという設定のシンプルな完成度を、逆に思ってしまった。

とはいえ今回改めてちゃんと見て、その美術の強さや、この後の様々な映像作品に与えた影響力なんかはしっかり感じる事が出来たし、何より全く退屈せずに二時間超余裕で見ている事ができたので、自分は非常に楽しい観賞だった。本業ミュージシャンで脇役なのに圧倒的な存在感で出現するたび画面を支配していたスティングや、終始地面からワイヤーで重力無効化装置で浮きながらゲラゲラ、ハイテンションの男爵も楽しかった。