Mr.ノーバディ

イリヤ・ナイシュラー監督 米 2021 92分 ☆☆☆

金型工場に勤めるパッとしない中年男ハッチは判に押したような毎日を繰り返し、妻や思春期の息子からも軽んじられている。ある夜、2人組の強盗が家に押し入ってくるが、チャンスはあったにも関わらず彼らを取り逃がすハッチ。しかし家族の中で唯一自分を慕ってくれる幼い娘のお気に入りの腕輪も持ち去られていると気付いた時、男の我慢が限界を迎える。

近年だと「イコライザー」に代表されるような、どこにでもいるような平凡男が実は凄い奴だった!系。正直まあ予想通りの内容、展開で特に書くこともないのだがそれはイコールつまらないということでなく、アクションも格闘、銃撃、カーチェイスとツボを押さえているし92分の気軽なエンタメとして非常に使い勝手の良い作品。中華が食べたくて中華屋に入ったらそこそこ美味しい中華がでてきてそりゃ満足、というような安定の観賞。

ただ強いて言うなら、主人公がいかに変化のない日常を繰り返しているかが非常にスタイリッシュ且つクールに表現される冒頭映像と、あと戦闘の描写がこの手の作品にしては妙にリアルなところが目立つ点だろうか。

本作主人公は勿論めちゃ強くて多数相手でも結局勝つのだけど、自分も殴られたり刺されたり床に叩きつけられたり、結構なダメージを負いながら泥臭く闘う。この「あえてスーパーマンにはしていない」というのはジャンルファンにとっても好みが分かれるところかもしれず、自分も正直、そもそも荒唐無稽且つベタな設定のファンタジーみたいなもんなんだから、戦闘もイコライザーのようにスーパーマンで良いのになと思わないでもなかった。だけどとはいえ、いくつかあるアクションシーンの完成度はどれも高く、豪快且つ丁寧に作られていて見応えは十分。

というわけで、やや詰めの甘い要素も散見されるものの、そもそも細かい所をどうのこうの言うような映画でもなし、総合的には満足のいく観賞。ただこれも戦闘をややリアル寄りにしたいとの意向からだろうか、肉体のダメージ表現がややグロい箇所が幾つかあるのでそこだけ注意。