ランボー 最後の戦場

ランボー 最後の戦場||洋画専門チャンネル ザ・シネマ

シルベスター・スタローン監督 米 2008 91分 ☆☆☆☆ 

当時20年振りの再起動で話題になったランボーシリーズ復活作。

タイ北部の奥地でひっそりと暮らしているランボーのもとにアメリカからキリスト教系慈善団体がやって来て、ゴリゴリの内戦状態にあるミャンマーに入って迫害されているカレン族の支援がしたいとガイドを依頼する。最初は断るランボーだが、一行の中の綺麗な女性サラにほだされて引き受ける。何とか彼らをカレン族の村まで送り届けたしばらく後、村がミャンマー政府軍に襲われ彼らも捕らえられた事を知る。

流石のランボーシリーズで、終始残虐描写は容赦が無い。それはミャンマー政府軍による虐殺、略奪、レイプを容赦なく描いているのもそうだし、戦闘中の肉体損壊描写までストレートに描いていてこれは好みのわかれるところかもしれないが、とにかく映像に説得力がある。

「武器は持たない」「どんな人間でも殺してはいけない」などの理想を掲げつつ戦争への介入を図る慈善団体は確かに愚かで夢見がちかもしれないが、実際かなりの危険を冒しながらカレン族への医療支援など行っているわけで、一概に彼らを甘ちゃん扱いするのもよくない。などと思いながら見始めた自分だったが余りにもケダモノ集団であるミャンマー軍の振る舞いを見るに付けどんどん気持ちが萎えてくる。特にクライマックスの河原でのバトル。もはや主義も思想も何にも無い、ただただやるかやられるかのごった煮の中、次々に千切れ、吹き飛んでいく人体人体人体。そもそも一体俺達は、何でここにいてこうなったんだっけ?めくれ上がる大量の泥、血、硝煙の中では目の前の敵を排除しただただ生き延びるという近視眼的な意識のみが肥大し、それ以外の全てが後景に吹き飛んでいく。ころすころすころすころす。

気がつけばあれだけ不殺を訴えていた慈善団のマイケルは手にした石を何度も敵兵に振り下ろし、また、それまで善意に満ちた気高い聖女のごとく振る舞っていたサラは狙撃手の横で、座り込んで下を向きびくびく震えるばかりの置物と化していた。まさかのベルセルクファルネーゼみたいな演出、意地悪すぎるよスタローン!

(なおこの戦闘シーン、手振れしまくってたり、視界の隅で何かが吹き飛んでいるけど構ってられない!みたいな荒々しいカメラワークも非常に効果的に機能していた。)

ようやく全てが終わった後、丘の上から戦場を見渡すランボーの顔つきに勝利の高揚はない。誰よりも闘いの愚かさを知りながらその強さ故にいつも巻き込まれていく男、ランボー。今作も激しい学びがあった。

ただ最後、ランボー1の頃と同じ服装で故郷に戻っていくのはファンサービスとは分かりつつも流石に笑ってしまった。