ハウス・オブ・グッチ

映画衣装をチェックして、さらに『ハウス・オブ・グッチ』通に! | Numero TOKYO

リドリー・スコット監督 米 2021 157分 ☆☆☆

有名なグッチ家御曹司殺害事件の映画化。ファッション系の映画は当然画面や衣裳が楽しい事が多いので期待するのだが、本作はあくまで事件の顛末が中心で、邸宅の建築やコロコロ変わるレディー・ガガの衣裳など視覚的に楽しめるところももちろんあるにせよ、鑑賞後の全体的な印象としてはファッションや美術はあくまで副菜の域を出ない。あと人物が終始英語で会話している事も、分かっていた事とはいえやはり興を削ぐ。

70年代のグッチ、御曹司であるマウリツィオは法律家を目指し家業を継ぐ気も無かったが、あるパーティーで野心に燃える女パトリシアと出会った事で運命は大きく動き出す。

こんなに演技もいけるのかと驚いたレディー・ガガをはじめ役者陣は皆頑張っていたし、思いがけず久し振りにアル・パチーノが見られた事も嬉しかった。にも関わらずあまり楽しめなかったのは、上にも書いたように結局事件の顛末が主題の映画なので意外とファッション的に楽しめる場面が少なかったのと、何よりドラマの中心たるパトリツィアにあまり人間的な魅力を感じられなかったのが大きい。

彼女は登場時からして既に野心に燃えており、ラストシーンに至るまでその唯我独尊且つ高慢な姿勢は一貫しているが、それが何だか昔の少年漫画のペラペラの悪役のようで、終始好きになれなかった。悪役や主役が「ペラペラ」であることが必ずしも悪いとは思わないが、割と長尺の本作において彼女も、その相手役であるマウリツィオもどちらも何だか平板な人物に見えてしまって楽しめなかった。ちなみにそういった意味では、アル・パチーノジャレッド・レトの2人が演じたアルドとパオロ親子の方が自分にはよほど魅力的で、彼らが画面に登場すると嬉しかったし、マウリツィオの父親ロドルフォも超イケメンジジイで最高だった。屋敷の庭でアルドと2人で話すシーンのロドルフォの装い。あれが自分的本作ベストファッションだった。

上にも書いたが役者陣は皆頑張っていたので、端的に脚本が自分には合わなかったのかなと思う。もっとも自分は絵づらを気にして映画を観る割合が高く、特にファッションを題材にした映画はそのハードルが高くなってしまうので、やや場違いな観客だったのかもしれない。157分というランタイムの長さから、てっきりビジュアル的に攻めてくれるような場面も結構多いだろうと勝手に期待してしまった。

なお最後に告白すると、劇中あらゆる場面で色んな表情みせるパトリツィア=ガガがなぜか高確率で友近に自動変換されてしまったことも、映画の印象に大きく寄与していることは正直否めない。友近がでた途端、画面のすべてが壮大なコントと化してしまう、、そんなに似ているわけでもないのだけど。