8人の女たち

8 Femmes / 8人の女たち de フランソワ オゾン (2001) - Unifrance

フランソワ・オゾン監督 仏 2002 111分 ☆☆☆☆

「邸宅の居間」という一つの場所で人が入れ替わり立ち替わりしながら進行するので映画というより舞台みたいな作品だと思っていたら、やはり原作は60年代の舞台演劇で、本作はその映画版だった。イザベル・ユペール目当てで見たけど、貫禄ある大奥様のカトリーヌ・ドヌーブや他の女優たちもその魅力を十分に発揮しており、また如何にもフランスらしい邸宅のインテリアや女達の衣裳など、物語以前にまず非常に目に楽しい作品。ジャケットのビジュアルを見てピンときた方はそれだけでも見る価値があるだろう。

クリスマスの日、郊外の邸宅に大黒柱マルセル以外は女ばかりの親族が久し振りに集まる。しかしメイドがマルセルの寝室に朝食を持って行くと、彼は背中を刺されて死んでいた。犯人は誰か。雪に閉ざされ陸の孤島と化した邸宅で疑心暗鬼が深まるにつれ、やがてそれぞれの秘密が明らかになっていく。

元ネタが古いのもあってストーリーライン自体に斬新さは無いけど、殺人事件のカラクリがどうというよりは、それを通して露わになっていく女達それぞれの秘密と葛藤が露わになっていく様が一番の見所であり、そしてその内容もどれも面白く、且つ全体のテンポも良いのでサクサク見られる。一人一回ずつ入るミュージカル歌唱シーンもそれぞれのキャラクタや雰囲気が楽しく反映された楽曲で、ミュージカルなんて普段全然縁の無い自分でも非常に楽しく見た。(特にルイーズとシュゾンのパートは最高で後から繰り返した)

ちなみに女達はそれぞれの立場から唯一の男=マルセルにからめて、あるいは時に全然関係なく色々と複雑な愛憎関係を持つがその全体は妙にこざっぱりしており、最後まで観ても全然女達のドロドロ劇みたいな印象はない、むしろどちらかというと友情的な爽やかな読後感で、これはお国柄だろうか。その辺りも好感触。

最初はもっと落ち着いたトーンのいわゆる普通の映画だと思って見始めたのでミュージカル演劇的な内容は意外だったが、たまにはこういう趣向も楽しく、結果非常に面白く観られた。そしてこれは偶然だけど今現在まさにこの演劇の日本版が上演中のようで、初めて舞台に興味を持っている。