ガンパウダー・ミルクシェイク

ガンパウダー・ミルクシェイク』はタランティーノやペキンパーの様式美を受け継ぐ、華麗かつ残酷なデス・バレエ | 映画 | BANGER!!!

ナボット・パプシャド監督 仏・独・米 2022 114分 ☆☆☆

最初から分かった上で見始めたが、それでも想像以上にタランティーノ、隠し味にリュック・ベッソンだった。

15年前に失踪した母の跡を継ぎ、腕利きの殺し屋として名を馳せるサム。ある時、自らが殺したターゲットの幼い娘にかつての自分を見出し思わず助けてしまうが、それは組織への裏切りを意味していた。

孤独な暗殺者が少女のために組織を裏切り追っ手との戦いが始まるという定型脚本だが、全体的な雰囲気はポップで、絵面や音楽の使い方、物語のノリやテンポ感などもタランティーノをはじめとしたアメリカンB級アクションの遺伝子が色濃い。で、元々そういったジャンルムービーとして期待して観たこちらの欲求にはほぼ期待通り応えてくれる作品だし、「図書館」の3人はじめ各種脇役達の造形も良いのだが、如何せん肝心のアクションシーンが全体的にやや迫力不足か。終盤で活躍してくれるベテランのミシェル・ヨーに関しては流石の動きのキレだったが、それ以外は主人公のサム含め、頑張りは買うもののやや厳しいといったところ。それと特に終盤で、戦闘中の会話や愁嘆場が妙に長いのも気になる。そもそもお話で魅せるタイプの作品でもないし、ここら辺は多少の辻褄なんて関係ないくらい強引に進行してでもテンポを重視して欲しかった。

とにかくビジュアルは良いしその他も悪くはないのだけど、良くも悪くもコンセプトに対し、作品全体がこじんまりまとまりすぎている印象。個人的にはもっと大胆に突き抜けて欲しかったが、とはいえこの手のジャンルが好きなら基本的には十分楽しい作品だろう。