ストレイト・ストーリー

デビッド・リンチ監督 米 1999年 111分 ☆☆☆☆

リンチが作っためずらしくまともな感動作、その名もストレイト・ストーリー。主人公の名がストレイトなのだけど、自身の作風のパブリックイメージを逆手に取ったこの渾身のギャグ。そして普通に良作という、そこまで含めて面白いネタ。

色落ちした水色のデニムにバッファローチェックのネルシャツをイン、頭にはテンガロンハットという出で立ちが死ぬほど良い感じのジイさんが仲違いしている兄貴に会うため、早歩き位の速度しか出ないトラクターで500㎞の旅に出るロードムービー。景色や人物を自然光で広く撮った奥行きある画面に、淡々とした進行が似合う。旅の途上に出会う様々な人々との触れ合いの中、ふとこぼれるジジイの言葉や眼差しは滋味深く、観ている者の心に厳しくも優しく染み渡る。

「じゃあ、年を取って最悪なことってなに?」

「若い頃を覚えていることだよ」

 

主演のリチャード・ファーンズワースは勿論最高だが、娘役のシシー・スペイセクも非常に良かった。そして彼女と椿鬼奴は似ている。