イコライザー

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アントン・フークア監督 2014 アメリカ ☆☆☆☆

「おっさんミーツガール+仕事人」直系の定番ものではあるのだが、流石に今時この系譜をだしてくるだけのひねりも加えてあり、面白かった。

CIAの凄腕ボブは妻の死を契機に引退し、今は素性を隠して静かに暮らしている。ある夜いつものダイナーで読書している時に年若い娼婦のビリーと知り合い親しくなるが、彼女は客とのトラブルが原因で元締めより暴力を受け入院してしまう。ビリーの友人から詳しい事情を聴いたボブは元締めの店に向かう。

今作では非常に類型的な「環境でやさぐれちゃったけど心根は素直で純粋な少女娼婦」を演じるクロエちゃんが何だかいつになくムチムチでとても可愛い。これはきっとビリーという役が夜型且つストレスの多い仕事ということから、ポテトとか揚げものをやばい時間に大量に食うような生活をしてるであろうという役作りでムチムチになった、、わけではないんだろうけど、とにかく魅力的でよい。

で、本作の良い所はやはり何と言っても物語が進行するごとに、半ばギャグのように話が大きくなっていくところ。最初はクロエのために娼婦の元締めたる下流の悪党を狩るが、行きがかり上その上層も狩ることになり、その後も段々と相手が大物に、事件自体も大事になっていく。しかし主人公は何と言っても元CIAの凄腕なので、何やらこれまた元CIAの上層部だったのであろう旧友の女性スーザンから相手方の情報、またやりあう許可をそれとなく取り付け、結局非常な短期間で全ての事件にほぼ一人でケリを付ける。デンゼル、格好良い。

最初はあくまでも町のチンピラを成敗するぐらいのところから始まってあれよあれよと話が大きくなっていく様は非常にB級ぽくも小気味よく、またボブの異常な強さを存分に堪能出来る一対多のアクションシーンの素晴らしい説得力も加味され、お話全体として全く破綻していないし勿論ギャグにもなっていない。。いや若干ギャグにはなっているか。でもその外連味も含めて魅力にはなっています。

ただ最後、今回の成功に気をよくしたのか困っている人を募集する必殺仕事人みたいなサイトを立ち上げるところで、映画は終わる。これは単に「ああ、シリーズ化する気満々だなあ」では終われないラストで、強大な武力を持つ者が自身の判断のもと、無関係の場所に介入していく事を肯定するともとれるアメリカらしい傲慢な印象を受けた。そういえばたしか冒頭の方でビリーの事件に自分の力を以て介入するかどうか葛藤する描写があったと思うのだけど、今回の事件を経てそこの葛藤が解消されたという事なんだろうか。最後の最後で主人公が安いヒーローにされてしまったような複雑な気分。

ただそんなラストはともかく、イップマンよろしく「物腰穏やかだけどいざとなったらめちゃ強い」デンゼルがいかに効率よく相手を無力化するかという軍人仕様のシャープなアクションでもって、北斗の拳の雑魚よろしくヒャッハーな悪人達をばたばた倒していくのは非常に爽快だし、大枠はよくある定型ながら細部の行き届いた捻りで楽しませてくれる脚本もやっぱり素晴らしい。(各所に仕込まれた地味な小ネタとその回収も良い塩梅だと思う)

で、先に書いたようにムチムチのクロエちゃんも可愛いし、ついでにその友達の娼婦も可愛いし、もちろんデンゼルも可愛いし、そもそもデンゼルとクロエが出会うホッパーのナイト・ホークスみたいな深夜営業のカフェ、都会の夜中にぽつりと一本だけ灯る街灯みたいな寂しげな風情が最高だし、何だかんだ、思った以上に丁寧な作りの良作だった。