生きてるだけで、愛

生きてるだけで、愛。』極上の日本映画となった「5つ」の理由! | cinemas PLUS

関根光才監督 日本 2018 ☆☆☆

本谷由紀子の原作小説は未読。何となく菅田将暉が見たくて適当に見てみたが、ヒロインの趣里が印象に残った。水谷豊の娘なのか、、爬虫類ぽい可愛い顔立ち。

躁鬱がひどく過眠症も患う寧子は合コンで知り合った週刊誌記者・津奈木と同棲している。バイトひとつまともに出来ない自分に苛立つ寧子は、夜遅くまで働きながらいつでも穏やかな津奈木にいつもきつく当たってしまう。だがある日、津名木とよりを戻したい元彼女・安堂が現れ、寧子は自立のため、彼女の馴染みのバルでバイトすることになる。

しんどい映画。カフェ関係の人以外、ほぼ全員参っている。特に主人公カップルは、愛情とも共依存とも取れる関係が、二人ともいかにも物語のキャラクター然とした雰囲気と演技なのに妙に生々しい生活感だけはあって、そのギャップが結果として、二人の生活の息の詰まる感じをよく表していた。特にヒロインの趣里は自分でもまずいと分かっていながらどんどん破滅の方に転がってしまって、そしてその事でより自己嫌悪となげやりが増幅していく躁鬱者の負のループ、あのどうしようもなさをうまく体現していたと思う。

ただ映画としてはところどころ演出過剰に思えた。特にラストにかけての一連は、やっぱりこういう風に描いてしまうのかという印象。(物語の結末のことでなく、見せ方描き方について)

ある意味では悪とさえとれてしまう様な無垢さゆえに現行社会の中でどうにもうまくやれない孤独な二人の魂が、お互いの懊悩の果てでついに正面からぶつかるラストの結末がどんな形であれ、それは構わない。ただ本作は肝心のところで最後余計な味付けをしてしまっていると思う。

そもそも安堂が絡んでくる辺りから本作は良くも悪くもフワつきだすのだが(寧子も津名木も現実的なキャラクターだが、安堂はファンタジーだと思う)、だからこそ最後は冷水で締める様な、冷静な演出にして欲しかった。役者陣が総じて良かっただけに、余計そう思ってしまった。

何もかもが終わり失われた先でこそ、なおむき出しの生、その力が浮かび上がってくる。本作のタイトルからはそんな印象や願いを感じたし確かにその感触もあったのだけど。惜しい一作。