ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』、タランティーノが用意した秀逸な結末。 | Vogue Japan

クエンティン・タランティーノ監督 米・英 2019 ☆☆☆☆

60年代のハリウッド。かつて何作もの西部劇で主演を飾ったリック・ダルトン(ディカプリオ)だったが最近は若手におされ、焦りを感じている。彼の付き人兼専属スタント・マンでいつも行動を共にしているクリフ・ブース(ブラピ)も、同様に冴えない日々を送っている。

ある日、シエロ・ドライブにあるリック邸の隣家に今をときめくロマン・ポランスキー監督とシャロン・テート夫妻が引っ越してくる。

 

何の前情報も見ておらず、タイトルから勝手に「タランティーノも大人になって往年のハリウッドなどを情感豊かに描くようになったか、、」などと思っていたが見終えてみれば全然、やっぱりタランティーノタランティーノだった。かつての西部劇時代へのリスペクトたっぷりに、ディカプリオとブラピという豪華すぎる素材でいつも通り遊んでいるような作品。

特にブラピ演じるクリフの、何事にも動じず飄々としながらも、いつ爆発するか判らないヤバい雰囲気が最高。全体にのんびりした断片的なエピソードの羅列のような本作だが、彼の雰囲気が終始一貫した緊張感を映画にもたらしている。

西部劇が段々下火になっていく一方でヒッピー文化が台頭する時代の雰囲気や、シャロン・テート事件、マンソンファミリーなどのネタ元が判る程度の知識があった方が味わい深いのは確かだが、そのあたり知らずともこのタランティーノ流儀なB級感がいけるならば充分楽しめるだろう。ただ上にも「断片的にエピソードの羅列」と書いた様に、特に往年の有名タランティーノ作品と比較すると本作は良くも悪くもダラダラしているので、そういったスピード感や巧妙な伏線回収なんかを期待している人にはやや肩すかしかもしれない。

ところで、中盤にシャロン・テートマーゴット・ロビー)が自身の出演作を映画館に見に行く一連のシーンがあるが、ここでのシャロンの描かれ方、可愛すぎ。で、だからこそクライマックスはハラハラするが、色んな意味で流石タランティーノな決着。最高のオチだった。

タランティーノシャロン・テートが好きで、そしてブルース・リーはあんまり良く思っていないのかもしれない。そんな作品。何となくだけど夏に観るのが良いと思う。