世界で一番しあわせな食堂
ミカ・カウリスマキ監督 2019 フィンランド・英・中 ☆☆☆☆
アキの作品だと思ったらミカだった。
フィンランド北部の小さな村、開けた山裾の平原で一人食堂を営むシルカ。ある日店に中国人のチェンとその幼い息子が訪れ、人捜しをしているという。あるきっかけから、腕利きの中華料理人であるチェンが厨房を手伝う様になり、店は繁盛していく。
まさかフィンランドの山々や湖、サウナを背景に、中華薬膳料理の映画を観ることになるとは思わなかったが、丁寧に作られた良作だった。北欧の自然の美しさが広々と雄大に映され、またチェンの料理をきっかけに心を通わせていく村の人々の温かな雰囲気がたっぷりのユーモアと共に描かれ、何より決して美男美女ではない主人公の中年二人が心を通わせていく様がとても魅力的。人の言葉を素直に受け入れる真っ直ぐさと、いたずらに踏み込むことを恐れる距離の取り方が二人とも絶妙に可愛い。つくづく思うが、可愛げって中年以降の方が大事になってくるような気がする。
シルカの食堂が段々内装も含めて中華レストラン化していくのは、映画の内容とは全然別のところでうっすら怖いような気もするがまあ些細な事。終始優しい気配の漂う暖かい映画。ミカの映画(というかGOGO!LA)って主に撮り方やテンポの部分でアキに比べると良くも悪くもハリウッドっぽい、オーソドックスで俗な作りという印象があったけど、本作で大分見方が変わった。最も、単にレストランを舞台にしていたからそう見えただけかもしれないが。(アキも近作「希望のかなた」でヘルシンキのレストランを寿司屋化させていた)
劇中に登場するチェンの料理、どれもこれも綺麗で美味しそうで、特にパーチのスープはいかにも滋味豊かそうでよさげだった。
それぞれの衣裳やシルカの家の内装も可愛い。