悲しみのミルク

悲しみのミルク:映画作品情報・あらすじ・評価|MOVIE WALKER PRESS

クラウディア・リョサ監督 ペルー・スペイン 2009 97分 ☆☆☆☆

恐怖と憎悪による呪いの軛から少女が解き放たれていく様が、乾いたペルーの風景を背に、叙情豊かに語られる。

前時代に暗躍していたテロリストから母が受けた屈辱と恐怖。その呪いをそのまま引き継いだ娘のファウスタは誰にも心を開かず、また強姦の恐怖から膣にジャガイモを入れて生活している。しかし母が死に、埋葬費用を稼ぐため街に出た彼女は、著名なピアニストの邸宅でメイドの仕事を見つける。

ファウスタが抱える闇は、自身の体験からもたらされたものではなく母親の悽惨な記憶から来ている。悪意そのものに加え、それを娘にも引き継いだ母親という二重の呪い。これを祓うことは容易ではないが、雇い主のピアニストや庭師との静かな交流を通して少しずつ心の蓋をはずしていくような日々の中、いつしか母の埋葬は、受け継いだものとの決別にも重なっていく。

呪いに囚われ心を閉ざした美しい娘の解放を描くという寓話めいた話に相応しく、抑制された演出や幻想的な画作りも似合う良作。二階から落とされ破壊されたピアノを、燃やして灰にする場面のやるせない美しさ。所どころに印象的にさし込まれる花々も、花弁の美しさだけでなく茎の濃い緑色、太さが印象的。そんな映画。