それから

韓国映画「それから」若い女性と不倫関係にある優柔不断なダメ男。これは監督の言い訳なのか、それとも理想なのか。ホン・サンス監督 キム・ミニ出演【感想】  : とにかく映画が好きなんです【本館】

ホン・サンス監督 2017 韓国 ☆☆☆☆

ホンサンスのモノクロ小品。少ない登場人物と、事務所や飲食店など数カ所の定点撮影のみで構成されている。全体に会話劇の趣が強く、モノクロという事もあってジャームッシュや「女と男のいる舗道」の雰囲気に近しいものを終始感じた。音楽の雰囲気、使い方なんかは特に後者っぽい。

社長と事務の女性のみの小さな出版社。女性と社長は不倫関係にあるが、ある日関係の限界を感じた女性は社長に別れを切り出し、会社を辞める。一カ月後、新たに雇われた女性アルムは出勤初日から、社長の奥さんに浮気相手と勘違いされビンタされる。

いかにもモテそうな文系中年男性の社長やその不倫相手も可愛くていいのだけど、やはり圧倒的なキム・ミニの美しさに終始釘付け。ハイライズのスキニーと、無造作にゆるくまとめた長くてボリューミーな髪。整ってるけどどこか隙のある顔立ち。

物語は自堕落な不倫を繰り返している社長を中心に、すれ違う男女のやり取りを滑稽に描いていてコミカルな印象が強く、特に社長と女達との丁々発止は面白い。この社長はどうしようもないだらしない奴で、あれだけの経験をさせて一日でやめたアルムすらちょっと時間が経ったらもう忘れてるような奴なんだけど、妙に可愛げが合って、悔しいながらもああいう男がモテるのはよく分かる。なのでキム・ミニにどうしても目を奪われがちな本作ではあるけれども、MVPはやはりあの社長だろう。非常に上手かった。

そしてそんな色んなゴタゴタもやがては遠く、全てが忘れられていく予感に満ちた寂しいラストも、情感たっぷりながらサラッとした感じで、うまく切り上げていたと思う。

オフビート映画の系列を如実に受け継ぎながらも、特にすれ違う男女のおかしみと喪失について独自の語り口を見せるホン・サンス。本作は小品だがそれ故の見やすさも相まって、かなり推せる一本。

ところでこの手の映画って一見簡単に作れそうだけど、自分でやってみるとそれこそセンスが試されるんだろうなーという感想を本作を見て改めて抱く。いかにも言語化しづらい「ちょっとしたセンス」、全ての要素がそれで組み上がっている気がする。