ディナー・イン・アメリカ

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アダム・レマイヤー監督 米 2020 106分 ☆☆☆

冒頭10分を見て、アメリカって最悪だな笑 しかしこの映画は面白そう!と思いましたが、結果は半々といったところ。

これといった目標を持てず、唯一の社会との接点だったペットショップのバイトもクビにされたばかりのナード女子パティの唯一の心の拠り所は、ボーカルが覆面をしているハードコアパンクバンド「サイオプス」だ。ある日彼女は街で出会った若い男サイモンを成り行きで警察から匿うことになるが、実は彼こそがサイオプスのボーカル=ジョンQだった。

とりあえず音楽=ハードコアパンクが肝心な映画だけど、そこがちゃんと格好良かったのはまず素晴らしい。それにヒロイン・パティのファッション、特に最初の星条旗柄のワンピースは最高すぎたし、その他映画冒頭のテロップ演出とかもろもろ、お洒落インディー映画としての需要にはその辺りだけでもとりあえず応えているだろう。あと本作には、現代の若者達の映画なのに、SNSどころかスマホやPC自体が一切出てこない。ヒロインはバンドのライブ告知をチラシで知らせるし、レコーディングのシーンも昔ながらのテープ式みたいなものをガチャコンと回して録る。そういった現代ではもはやリアルとは言い難い趣向も、だけどこの映画にはよく似合っていて違和感はない。

ただ物語はやや凡庸か。冒頭のサイモンの人となりを紹介する一連がインパクトたっぷりすぎて、こんなアウトローとパティは一体どういった展開で関係を築いていくんだ?と興味を引かれるだけに、中盤~ラストにかけての割と普通なラブ展開には少し興ざめしてしまった。一般的な社会のコードにうまく馴染めない2人が出会って色々ありながらも関係を深めていくという王道自体はいいんだけど、上記の通り細部に気の利いた本作だけに、終盤の展開をもう少し捻ってくれていたら個人的にはより好みだったかもしれない。

とはいえアメリカン・インディーなカラフルで楽しい雰囲気にあふれていて、全体的には楽しんだ。調べていて、パティ役のエミリー・スケッグスは撮影当時30歳くらい?劇中では完全に少女だったので驚く。それとラストの方でバンドのライブシーンがあるが、そのライブ及び会場の雰囲気が正にDIYなパンク的雰囲気で雑然としていて非常に良かった。音響なんて悪くてもいいからあんな場所で生のパンクとかヒップホップに触れてみたいと思ったりした。