やさぐれ姐御伝 総括リンチ

やさぐれ姐御伝 総括リンチ | Tumblr

石井輝男監督 日本 1973 ☆☆☆☆

賭場をさすらう女流侠客という設定や派手な殺陣から始まる導入などは以前見た緋牡丹博徒シリーズと共通するところが多いが、こっちは速攻で殺陣中に全裸。

昔世話になった親分の組にしばらく草鞋を脱ぐこととなった主人公、猪鹿お蝶。ただその親分は既に故人となっており、跡目を継いでいる現組長は何だかきな臭い。薬物商売に手を出しており、しかも行き場のない女達を薬漬けにして運び屋として利用しているようだ。そんな卑怯な野郎どもと着流しで戦うお蝶。しかし戦っているとどうしても、段々着物は脱げてくるのだった。

冒頭から早速噂通りのエロ加減とストーリーのぶっ飛びだが、ただグロに関してはそれほどでもなく、またお話も演出も陰湿、陰惨な感じはないので全体的には非常にヘルシーな印象。おっぱいも全編にわたって余りに当たり前に存在しすぎていて、特に名物である最後の大乱闘ではもうそこら中おっぱいだらけでおっぱいのゲシュタルト崩壊こそ起こすものの、淫靡な意味でのエロさはほぼない。だれかが本作について「タランティーノは見たのだろうか?泣いて喜ぶはず」と書いていたが、非常に納得。ああいう感じのヘルシーなB級感。こっちの方が大分先だけど。

冒頭殺陣シーンの、主人公の紅の和傘と取り囲む侠客達を真上から見下ろすショットからしてすでに非常に印象的だが、要所要所ではっとするほど鮮烈な感覚の絵面が不意に飛び込んでくる事も多く、特に色彩はかなり力がある場面が多い。ぶっ飛んだお話の印象が強すぎて細部はサラッと流してしまいがちだが、絵作りは時にかなり繊細な作品だと思う。

とにかく生理的な快楽が一番で整合性は気持ちの良いくらい二の次、こうすればエロいし退廃的だし最高!という奔放な衝動を遠慮無く解き放ちまくっている感じの爽快さと、それを衒いも無くやりきる突き抜けが最高な一本。倫理的に許されない表現があるという実際的な問題を別にしても、現代ではもう映画に限らず、あまりこういう野放図は拝めないだろう。

主演を努める池玲子の豊満な肉体もさすがにこれだけのおっぱい達を脇に主演をつとめるだけあって非常に素晴らしく、およそほとんどの男達を紳士に変えるに充分だろう。もしかしたら女さえ。そんな作品。