哀しみのトリスターナ

ルイス・ブニュエル監督 仏 1970 ☆☆☆

tristana

母親を亡くした美しい少女は、知り合いの初老紳士に引き取られる。最初は父親然として振る舞う紳士だったが、次第に男女としての関係を求めるようになっていく。やがて自我に目覚める女は、知り合った若い男と駆け落ちする。

色々とあった男女二人の悲喜こもごも、愛憎を何十年にもわたって見詰めるような、よくあるといえばよくある内容だが、終盤の展開はややトリッキーで難解。時を経て段々と傲慢の角が取れて柔和になっていく紳士と、年月を経て無垢な少女から酷薄な美女へと変貌していく二人の対比が見所だろうか。そしてブニュエルらしいと言っていいのか、やっぱり唐突に変なシーンもあったりして、とにかく普通の文章なのかもしれないが、どこかに縦読みがないか?と警戒しながら見てしまうような観賞となった。特に長年二人の間に入るような感じで振る舞っていた、メイドのおばさま。ぎすぎすした主役二人の空気をうまく中和するような楽しい役だったが、同時に終始、存在感が怪しすぎた。ラストシーンでも何だか女二人ルンルンに見えたし、見終わった今でも怪しい人。

美術や衣裳は当然素晴らしい。特に今作はメインの舞台となる屋敷のインテリア、中でもベッドのフレームと、あとは古びた石造りの市街景観もお気に入り。