あの胸にもういちど

あの胸にもういちど 【HDニューマスター版】 Blu-ray | TCエンタテインメント株式会社

ジャック・カーディフ監督 1968 英仏

常識的で優しい夫に結婚2カ月で飽き飽きしたマリアンヌ・フェイスフルが全裸にタイトな革のツナギだけを身につけ、刺激的な愛人アラン・ドロンの元へと大型バイクで走っていく。ただそれだけの映画だが、むしろ主演二人のPVに徹したような潔い作りになっており、90分間全然退屈しなかった。マリアンヌは終始エロくて可愛いし、アランドロンは美しすぎ。

観る前はもっとアメリカンでB級ノリを想像していたが、爆走シーンとその合間に挟み込まれる主人公の回想とモノローグを軸にした、意外と内省的な仕上がり。と思ったら原作はマンディアルグだった。時折入るサイケデリックな映像演出は流石に時代を感じるが、かなり上品な使われ方をされている事もあって、今見てもそんなに違和感や、笑いになってしまうこともない。むしろいい塩梅で格好よいかも。

あらゆる社会的な軛から抜け出すための装置としてバイクが象徴的に使われ、スピードの恍惚と共にやがて訪れる楽園の予感、から一転するラストなどは完全にアメリカンニューシネマな雰囲気だが、レザーのツナギを着た美女が大型バイクにまたがって爆走する映画ですらずっとどこか白昼夢のような雰囲気が漂っているのは、如何にも欧州の映画という気がする。そして幻想的な雰囲気って高まれば高まるほど、不思議と破滅の気配は薄くなっていく。なので本作も終始ダウナーだけど、悲壮感は全然ない。

とにかくマリアンヌが可愛い。回想シーンに登場するツナギ以外のファッションも楽しい。