ラスト・ムービースター

アダム・リフキン監督 米 2017 103分 ☆☆☆☆

本作は主演のロバート・レイノルズという非常に格好良いお爺さんの実際のキャリアと大きく重なる内容らしいけれど、自分は彼の事は知らずに観賞した。正直そんなに期待していなかったが、丁寧で良質な作品。

かつて一世を風靡したものの、現在は老いて体を悪くし一人暮らしをしている元映画スター・ヴィックに、あるとき聞いたことも無い映画祭から招待が来る。最初は渋るものの、かつてクリント・イーストウッドも受賞したと聞かされ参加する事にしたがいざ現地の空港に着いてみると迎えに来ていたのは自分の事など知りもしない若きゴスギャル(パンクス?)・リルだけ。怪しく思いながらも彼女のボロボロ車に乗り込むヴィックだが到着した先は映画祭会場とは名ばかりの、小さなバーだった。

頑なな老人とやさぐれた若者が最初は反発しあいながらもやがて打ち解け、心を許せる関係になっていくという王道。何の捻りもないが、全体的なユーモアのさじ加減や、何より気むずかしい主人公の心情がリルと過ごす内に段々ほぐれていく様などは非常に丁寧に描写してあって、安心して観ていられる。他にも、そこそこの低予算映画だと思うけどロケ場所も割とコロコロ変わるし、全体に製作陣の地道な頑張りやガッツがそこかしこに感じられる。

撮り方も物語のペースも何もかも、誰もが見慣れた感じのザ・アメリカ映画で、それが非常に良い。王道が欲しい時にはもちろん、尖った映画観賞の合間に挟んだり、こういう映画はやっぱりカジュアルに使いどころが多いのが素晴らしいと思う。

主人公のバディとなる革ジャン女子・リルも可愛いし、絶妙なルックスと存在感。彼女のファッションも楽しかった。