THE WITCH /魔女

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パク・フンジョン監督 2018 韓国 ☆☆☆☆

これは多分何かのサイトのおすすめで偶然出てきたのが面白そうだったので観たのだけど、それがなければこんな面白い、肌に合う作品をスルーしていたかもしれないと思うとゾッとする。それくらい最高だった。主演のキム・ダミは如何にもアジアンで薄い顔立ち、一重まぶたのでっかい目が超キュートな美少女ですが、今作が映画初出演にして初主演とのこと。なのにこの演技、アクションって、韓国映画界の新人教育どうなってんだ?凄すぎる。

幼い頃に謎の施設から脱け出し血まみれで倒れていた所を農場の夫婦に拾われ、養子として育てられた少女ク・ジャユン。十数年後、高校生になっていた彼女は農場の経営難を救うため、賞金目当てでテレビのオーディション番組に出演するがそこで披露した手品がきっかけとなり、謎の男達につけ狙われる事になる。

OPの古い実験映像みたいなものからまず滅茶苦茶格好良く、何度か巻き戻して見てしまった。あれは言うまでもなくAKIRAであり、他にも銃夢ガンツなど、本作では日本のSF漫画から発生したと思われる常套句が幾つも組み合わされているが、その組み合わせの妙、また本作独自のミステリー的展開も相俟ってかなり独自色の強い、素敵なリミックス作品になっているように思う。言うなれば「実は超能力を持っていた少女、覚醒したらめちゃ強い」という型を直球の王道で展開したのが最近観たばかりのアリータだとしたら、本作はその型はやはり踏襲しつつも、ミステリー要素を加えつつ捻った変化球といえる。そしてアリータは、あれはあれで勿論素晴らしかったが、本作でCGではない生身の肉体によるアクションを見ると、やはりぶつかりの感覚が軽かったなと思わざるを得ない。それくらい本作終盤の怒濤のアクションパートは、生身の重さと速度と特殊効果が同居した素晴らしいものだった。そもそも格闘と銃撃とサイキックを絡めたバトルって意外と実写で見た事無く、それって誰もが思いつくもののやっぱり描写がなかなか難しいのだと思うが、本作では殺陣の設計や役者陣の演技のみならず、撮り方も編集も全てが合致して大変素晴らしく仕上がっている。

なお見終わった後、中盤以降の展開、アクションパートのカタルシスが凄すぎて、穏やかな前半部分の影が薄く感じてしまいがちだが、しかしあの丁寧なフリがあるが故に後半の種明かし&血みどろが生きてくるということと、何より主演キム・ダミのキュートさをたっぷり堪能できる前半はこれはこれで、自分は大いに楽しんだ。前半の日常映画っぽい演出に一番貢献していると思われる親友役の女の子も、騒々しくてお節介だが主人公の事を本当に慕っている感じがよく伝わってきて可愛らしかった。あのこも上手かったな。

とにかく個人的に好みな要素が満載の傑作だった。何となくいけ好かない印象があった各種サイトの自動レコメンドだが、本作に出会わせてくれた以上今後は態度を改めねばなるまい、、、

ところでタイトルや終わり方を見る限り続編ありきで製作しているらしいが次作は最初からネタが割れている分、より純粋な異能者どうしのバトルメインになるのだろうか。それともそう思わせて裏切ってくるのだろうか。何にせよ非常に楽しみ。