天国でまた会おう

ネタバレ&感想!映画『天国でまた会おう』はルメートル原作の感動ドラマ! | ソレガシのシネマ鑑評巻

アルベール・デュポンテル監督 フランス 2017 ☆☆☆☆

本作は自分がどこで知ったのかも覚えていないが気付いたら映画リストに入っており、あまり期待もしていなかったが、べらぼうによくできていて非常に面白かった。

第一次大戦従軍中に知り合ったアルベールとエドゥアールの二人は大けがを負って復員後、驚くほど自分たちを冷遇する社会に嫌気が差し、エドゥアールの絵の才能を活かした詐欺を仕掛け大金を稼ぐ事に成功する。ホテルのスイートで豪遊しながら明日はモロッコに逃げようという前日、二人それぞれに蓋をしていた過去の因縁が迫ってくる。

コミカルタッチなフランス映画に多いあの独特のノリ(アメリとかでお馴染みのあの感じ)でテンポ良くサクサク進む本作だが、国のため命を賭して闘ったのにも関わらず報われない主人公二人をはじめとして、登場人物それぞれの事情や背景が、ポップで軽快なノリの中にもしっかりとした重量感でぬかりなく描写されている事がまず素晴らしい。特に、主人公の片割れエドゥアール。戦争で下あごと声を失ったにも事の失意から仮面をつけて甦るとともに社会をあざ笑う怪人と化してしまう彼だが、本作はそんな彼が如何にして人間を取り戻すのかを描いた話でもある。切ないダークヒーローとして、彼の物語は本作の背骨であり白眉だろう。

フランス映画丸出しの美術面も豪華で、どの場面も素晴らしい。特に、手先が器用で絵や工作が得意なエドゥアールが場面ごとに着けている色んな仮面は本作の花形。うまく言葉が話せない彼と唯一円滑に意思疎通できる孤児の少女ルイーズが常に通訳の様に傍にいる妖しい雰囲気も相まって、毎場面楽しみだった。(ルイーズも衣裳込みでめちゃ可愛い)。

フランス映画一流のこのデザイン感覚、雰囲気って、未だになかなか他国製の映画では味わえないと思う。

語り口は軽快且つポップでありながら鋭い戦争・社会風刺の棘を失わず、また奥深い家族ドラマでもあるという一見ぶれぶれになりそうな各種の要素をきっちり入れ込みながら、全体としては一つの物語としてきっちりまとめている良質な脚本。さらにそれを仏国ならではの美術センスと演出でしっかり味付けしている作品で、大傑作。

フランス映画に苦手意識を持っている人や、何となく英語圏以外の作品を観たい人にも推したい。